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第69話 そんなキャラだっけ?

last update Last Updated: 2025-07-28 12:05:10

 夏休みと言っても特にいつもと変わったことは無い。

 少し夜遅くまで起きてたり、昼過ぎくらいまで寝てるなんてことは、今までの週末となんら変わりないのだ。

 違いなんていえるのは、学校に行かないってくらいのモノだろう。

 その代わり宿題はたっぷりと出るからタチが悪い。コツコツやれば十分に終わるようにしっかり計算されてるみたいだ。

 数日間はノートを開いて辞書を出して調べたり、インターネットを駆使して調べ物したりと真面目に取り組んできたものの、三日目あたりから飽きてきた。

 この間に遊びにいくなどの用事もなければお誘いもなかった。結構凹む。

 こんこん

「お義兄《にい》ちゃん?」

「は、はい?」

 ベッドの上で一人モヤモヤしてると、開け放たれたドアを律義にたたきながら小さな顔が覗き込んできた。

「ちょっといいかな?」

「おう全然大丈夫!! なんの予定も今のところないからな」

「あ、う、うん てへっ」

――あ、今伊織が笑ってごまかした。かわいかったけど少しショックだ。

 テクテクと部屋に入って来てクッションの上にぽふっと座る。そしてあの時以来何故か母さんが姿を現すようになって、今も当たり前のように伊織の隣に座っている。

「あのねお義兄ちゃん。今回の話なんだけど……たぶん私達だけじゃ解決できないとおっもうんだよね」

『そうねぇ……あなた達だけじゃかなり不安ねぇ』

「俺もそうは思ってるんだ。仮に日暮さんの話が真実だったとしたら事件になる。そんな事になった到底俺達じゃ解決どころか傷口を広げてしまうだけかもしれない」

「傷口?」

「うん。被害者だよ」

 少し考えていた伊織が何かに気付いたかのようにクチに手を当てて目を大きくする。

「母さんはどう思う? あの日暮綾香さんの事」

 腕を組んで少し考えるような姿勢を取ると、近頃は見せてなかった真剣な顔を向ける。

『彼女はたぶんこの

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